だれに向けてものを作るのか?

お客さんのために商品を作りたいが、数字を落とさないためには回転率をあげないといけない。そうすることで愛され続ける定番は生まれにくくなている。メーカーのジレンマではないだろうか。

 

早く、たくさん、効率よく。

スピードと多様なニーズを満たすためには、とにかく数多くの商品をたくさん出して、サイクルを早めること。これが現代多くの企業が向き合っている課題である。

 

 

それが当たり前の現代において、効率よりもこだわりを重視した異色の商品に出会った。

第一屋製パン株式会社(以下第一パン)と近畿大学(以下近大)がコラボした
「和風焼きカレーパン 近大マグロ中骨だし使用」。

 

 

パンとマグロ?異色なのはネーミングだけではない

パッケージからもにじみ出る圧倒的な的なマグロ感!

「これって本当にパンなの?」

思わずそう突っ込みたくなるこの異色のパンを作った、第一パンの佐藤さん近大広報の坂本さんに話を聞いてみることにした。

 

 

近大マグロを骨の髄までしゃぶり尽くす


(写真中央:近畿大学 広報 坂本さん、右:第一パン 佐藤さん)

 

ー近大と言えば「マグロ」ですよね。

坂本さん:
はい、近畿大学では、世界で初めて完全養殖に成功しています。「マグロ大学」なんて言われ方もしています。

 

ーマグロのコラーゲンでリップを開発し、商品化したものを学内で販売されているんですよね。

坂本さん:
そうなんです。コラーゲンはリップに、皮はカバンに再利用しています。そして今回は、中骨だしを使ったカレーパンを第一パンさんと開発、発売する運びになりました。

 

ーまさに「骨の髄までしゃぶり尽くす」精神ですね。

坂本さん:
はい(笑)

 

ー近大さんに声をかけた経緯はなんだったのでしょう?

佐藤さん:
TVニュースで先ほどのマグロの皮から財布を開発した話を聞き、すごいと感じたことが最初です。

弊社ではこれまでも他の企業と共同開発して商品を出してきた経緯があります。ですから、ユニークなアイデアをお持ちの近畿大学と第一パンがコラボすれば、お互いの強み、ノウハウを生かしてコラボしたら面白そうだなと感じました。

 

近大マグロ×カレーパンができるまで

あえて揚げない

ーマグロの骨をパンにするってなかなかない発想だと思うんです。何かその辺工夫や苦労はありますか?

佐藤さん:
おっしゃる通り、パンは洋風ですから、和風には本来なりません。“マグロの魚臭さ”をどうパンにするのかが課題でした。ふと思いついたんです。日本にはカレーがある!だし系だ!と。

 

ーだしとしてマグロを使う作戦ですね。

佐藤さん:
はい、そうです。ただここでも難点がありました。カレーパンと言えば、普通は揚げます。実際揚げてみると…油のマイルド感が生地のなかに入って、魚のマイルド感が消えるんです。というわけで、焼きカレーパンにした。

ただそうすると揚げているカレーパンのような食感がなくなるので、ごまとチーズを上にのせました。

 

近大マグロのみの骨を集めることが大変だった

 

佐藤さん:
近大マグロの骨をパウダーにしたものがパンに入っているわけですが、この骨を集める工程が大変でした。近大マグロを卸している銀座のお店に骨を集めてもらい、毎日送ってもらうんです。100キロ集まってやっとパウダーにできるのですが、毎日2キロくらいしか集まらない。

ーそれは効率という点においてはまったく美味しくないのでは?

佐藤さん:
そうですね。でも売れるのも大事なんですが、近大さんの「資源を無駄なく使う」という意図を大事にしたかったんです。企業さんなどどこかとコラボする場合、企業理念ストーリーを弊社の勝手な思いでくずすのはよくないと考えています。

 

ー今の時代だからこそ、そういう視点って大事ですね。

 

嗅覚が使えない分視覚で勝負

佐藤さん:
街にある身近なパン屋さんは「焼きたてパン」などという具合に“嗅覚”に訴えかけることができますが、我々の場合一回袋に入れて流通させるのでそれができません。

嗅覚を使えないなら、視覚を大事にしました。「これなんだろう?近大とコラボかー、どんな味か?」そう思ってもらえるデザインにしました。

 

ーインパクトありますよね。青って本来食欲減退の色だと思うんです。

佐藤さん:
パンのデザインで青は基本使いませんね。スーパーのパンコーナーは、圧倒的に黄色赤茶色だから目立たせる作戦です。

 

ーおお、ちょっと異色なデザインですが、社内に反対派はいなかったのですか?

佐藤さん:
これが意外と反対はおきなかったんです(笑)。

弊にはパンを作る工場が5つあって、うちひとつは伊丹にあります。関西という部分でなにかインパクトのある商品が欲しいという空気も社内にはあったんです。

 

ー関西の人員を無駄にしてはならないということですね。

 

「海を耕せ!」近大のサステナブル精神

ー「無駄にしない」と言えば近大ですもんね。

坂本さん:
ありがとうございます!初代学長が「海を耕せ」という言葉を残しているのですが、資源を無駄にしないこと、環境に多大な負荷を与えず、持続可能な状態を意味する「サステナブル」は近大にとって重要なキーワードです。

普通の養殖は普通は海から幼魚を取ってくる。これはいずれ資源の枯渇に繋がります。近大の場合1回目は稚魚を取ってくるが、次からは卵を育て、資源を減らさずにサイクルを確立することに成功しています。コラーゲンはリップに、皮はカバンに、そして今回は中骨をパンに使ったわけですが、ただ儲けたいだけではないんですよ(笑)。

 

ー近大のそういうビジネス目線ってすごいですよね。

坂本さん:
世の中の課題を解決し、研究成果をお金にする。こういう大学のあり方が近畿大学だと思っています。

 

手を取り合って8ヶ月かけた共同開発

ーそれにしてもパンコーナーに大学名のものが入るってすごいですよね。共同開発って世間一般では、ぶっちゃけ名前だけじゃないの?って見方があると思うんです。

佐藤さん:
いえ、今回近大さんとは本当に手を取り合って開発でした。何度も近大に行き、8ヶ月くらい時間をかけました。

 

ーそれは長い方ですか?

佐藤さん:
そうですね。だいたい他のパンは作るのに研究開発する期間は1ヶ月です。じゃないと市場的に間に合わないし割にも合わなくなるんです。だけど今回は8ヶ月。長い方だと言えます。

 

ーなんでそんなに?

佐藤さん:
気がついたらそうなっていました(笑)。時間がかかった分思い入れが強いんです。

 

効率重視の世の中だからあえて時間をかけて作りたかった

 

佐藤さん:
先ほどパンの新商品は開発から製造まで1ヶ月であるとお話しました。そうして製造した商品の寿命はコンビニでだいたい6週間です。開発時間より消費される時間が短いなんてこともあるんです。

弊社もたくさんの種類のパンを出しますが、他社さんももちろんいます。そうすると売り場の棚争いになってるわけです。売れるためには回転を速くしないといけない。

 

ーそれは出版業界も同じだし、どこの業界においてもいえることかもしれませんね。

佐藤さん:
はい、「定番を育てる」よりも「新しいものを」って世の中になっていますね。

その点今回は近大マグロの骨をコツコツと集め、パウダーにし、カレーパンに盛り込み、パッケージにもこだわり…8ヶ月作り込んだので、長く残って欲しいという思いはあります。

弊社には「おいしさに真心込めて」という企業理念があります。常に美味しいものを探求することを大事にしています。その結果とも言えますね。

 

ーパン狂いとも言える情熱ですね!ちなみにパン屋さんに就職した動機は?

佐藤さん:
これ言っていいのかな…(笑)。もともとは乳業関係がやりたかったんです、農学部でチーズを作っていたので。結局チーズではなくパンを作ることになったけど、今思うのは物作りはどこも一緒「どこに心を入れてつくるか?」が大事です。

ビス、車、ケーキ…仮に何を作っていたとして、物作りにおいて大事にしないといけないことって同じだと思っています。

 

ーお二人とも貴重なお話をありがとうございました。

 

 

お客さんの方に向いてものを作りたいのに、早く、たくさん、効率よくを求められる時代。

だからこそ効率を度外視し、資源を無駄にしないという観点で生まれた商品があってもおもしろいじゃないか。近大マグロの中骨だしを使ったカレーパンは、第一パンの「おいしさに真心込めて」と近畿大学のサステナブル精神の融合した賜物である。

スーパーやコンビニのパン棚に並ぶパンの裏側に、こんなストーリーがあったとは。今日からパンの棚の見方が変わるきっかけになるのではないだろうか。

 

第一パン×近畿大学がコラボした和風焼きカレーパン 近大マグロ中骨だし使用」は、山口から北関東までの地域限定で、イオン、イトーヨーカドー、平和堂などで発売中です。

 

text:浜田綾

 

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今回、塩谷舞さんのセミナーに参加し、記者会見をレポートするという課題としてこの記事を書きました。
塩谷さんの添削を受けて、記事がみるみるよくなった〜感激!の2日間でした。

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ちなみにこのようなPR記事のお仕事依頼も承っております。

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ABOUTこの記事をかいた人

浜田 綾

ライター/コピーライター/エッセイスト 1981年生まれ 大阪府高槻市在住 企業で10年間ビジネス文書の作成に携わる。 同年7月電子書籍「ペコのプチエッセイ」を出版。 編集者、コピーライターとして活動の幅を拡大中。 幻冬舎・箕輪厚介氏主催の箕輪編集室にて「嫌われ者たちのリレー式コンテンツ会議」の編集リーダーを務める。2017年6月に「コトバノ」という屋号でフリーランスとして開業。